舞洲スポーツアイランドと呼ばれている通り、スポーツ施設が充実している舞洲地区。この地区の活性化のためには、本拠地を置く3つのプロスポーツチームの力が必須である。
大阪エヴェッサ・オリックス・バファローズ・セレッソ大阪の営業マンに“スポーツチームの営業”とはどういうものか話を聞いた。前編に続き後編である今回は、営業活動の難しさや楽しさを語っていただいた。
相互集客の難しさもあるなかで、横断的に舞洲にホームタウンを置く3チームとして積極的に手を取り合いたいと考える3者。舞洲地区を盛り上げるとしたらどのような取り組みができるかということについても、営業マン目線で考えていただいた。
スポーツの世界でも営業は営業
-スポーツ業界に入る前には、どういう仕事があると考えていましたか?また、持っていたイメージとそのギャップなどがあれば教えていただきたいです。
オリックス・山本:特に考えたことなかったですね。子どもの頃からプロ野球に憧れていて、プロ野球の球団での仕事はものすごく楽しいことばかりをイメージしていましたがこんなに大変だとは思いませんでしたね。
最初は野球の会社だから主な仕事は、チケット売るぐらいかなと。でもまあ入ったら放映権の営業やグッズ販売、飲食販売があったり、スポンサー営業があったりと。また、新卒入社ではなく、社会人3年目での入社、上司も先輩も即戦力で見ているので、営業成果が出るまでは焦りやプレッシャーが大変でした。
また、チームについて全国を飛び回ったり、キャンプの時期など海外や沖縄へ行くというようなイメージもありましたけどね。おそらく一般の人はそういう、選手と近いところで仕事ができるというような華やかなイメージを持たれているかと思いますが実際には泥臭い営業的な仕事が多く、扱っている商材が違うだけで一般的な事業会社の営業職と一緒なんですよね。
今でこそスポーツビジネスが注目されるようになり、また、インターネットの普及で情報もとれるようになったのでスポーツの業界での仕事もイメージしやすくなってきましたが、当時は何もわからないまま今の会社に飛び込んでいきました。野球が好きだからという純粋な理由だけだったので入社後はそのギャップもあり、苦労しました。
エヴェッサ・清水:スポーツチームならスポンサー収入やチケット収入、マーチャンダイジング、放映権など、様々な収入源があります。特にスポンサー収入とチケット収入が大きな収入源なので、そこを担っているとなかなか結果が出ない時は落ち込みますし、逆にスポンサーが獲得できたときや観客がたくさん入っている時は嬉しいです。
セレッソ・猪原:スポンサーの営業をしている時、例えばチームが3回降格するとします。1回目は1年で戻りますからお付き合いくださいと頼めば良いですし、2回目も同じように伝えればご理解をいただけることが多いです。ですが、3回目となるとその話も通用しません。それでもなんとかやりますと伝え続けてご理解いただくしかないですね。
ただ、降格しても「試合の観客動員数はあまり減ってないですよ」ということや、「ファンクラブの会員数が今このぐらいです」というお話もさせていただいたりしています。このように、数字やデータを見せていくことで説得力を出せるので、スポンサーさんも継続しようと前向きに検討してくれますね。単純に「この広告料はいくらです」というより付加価値として何ができるかというのを見せることが大事だと思っています。
-選手を獲得するためなど、スポーツチームの運営に必要なお金は元を辿れば営業を担うみなさんの成果だと思います。
エヴェッサ・清水:我々にとって企業から頂ける協賛金の一部はBリーグとしてのミッションでもある“夢のアリーナの実現”のためアリーナの演出にも使わせていただいています。昨シーズンに限って言えばチームに負けが多かったのですが、エヴェッサの試合を見に来て、「負けてしまったとしても演出が楽しかった」という感覚は、特に子供が得ることが多いんです。そして、子供のときに感じたものは、大人になっても凄く覚えているものです。
舞洲の存在が3チームの距離を近づけた
–平日に3〜4万人を集められるという点では野球は他のスポーツよりも根強い人気が有るように思えます。
オリックス・山本:プロ野球界全体の話になりますが、昨年の12球団合計の年間動員数は2,500万人を超えています。この50年間で2.5倍に伸びています。球団によっては1試合当たりの平均動員者数が42,000人を超えています。メジャーの人気球団と比較しても全く遜色ありません。国内の某球団はチーム成績に左右されながらも主催試合の約70試合をほぼ満員にしているんですよね。世界中のプロスポーツリーグの中でも、観客動員数だけでみると日本のプロ野球の集客力は非常に高いと思っています。アメリカのプロスポーツ、ヨーロッパのサッカーと比較してもスポーツコンテンツとしては、高いバリューを持っています。そういう意味でいうと日本のプロ野球はは約80年の歴史で野球を娯楽の一部として定着させているので、各球団ともにそこの経営努力は純粋にすごいなと思いますね。
そんな中、僕らバファローズの平均人数は現在、約23,000人なんですよね。土日など多い時は35,000人ぐらいは入りますが、平日の少ないときは10,000人台だったりとバラつきがあるので、平日の底上げが課題だと思っています。
セレッソ・猪原:勝敗が少なからず影響してくる中で、たくさん人が入って、なおかつクレームがないというのが大切です。たくさん入るといろんなところに迷惑かけることになるじゃないですか。無事に何もなく終わることが1番大事かなとは思いますね。
–野球は試合が多いので、毎試合多くの観客を動員させるという取り組みを考えるのは難しそうです。
オリックス・山本:主催試合は年間約70試合あります。試合数に比べるとアイディアの数は限られるので、試合ごとに濃淡をつけながら、ターゲットごとに動員施策やイベントを実施する必要があると感じています。
エヴェッサ・清水:限定的なイベントをどんどんやっていったら良いと思っています。選手に会えるような企画とか、新鮮なものを取り入れていきたいですね。
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