-スポーツチームを商材として営業活動をする難しさというのはどういうところにありますか?
エヴェッサ・清水:我々は世間認知向上が課題ではありますね。Bリーグ全体で難しいといえばそこですね。ただ開拓する楽しさはありますし、まだまだ伸び代があるなと思っています。ホームアリーナには観客が約6,000人入るんですけど、平均は半分の約3,000人。それでもリーグでは多い方です。その試合の対戦相手にも観客数は左右されますが、それをいかに満杯にさせるかというチケットセールスのミッションがあります。少なくとも毎試合5,000人入るようにしたいと考えていて、そこに難しさも楽しさもあるのかなと思っています。最終的にお客さんが入ったら嬉しいですし、勝ったらもっと嬉しいです。また来ようと思ってもらえますからね。
セレッソ・猪原:最初の頃は商店街に行って、そこにいるおじさんおばさん達と話をして帰ってくるという感じでしたが、自分を知ってもらうことがセレッソを知ってもらうことにもなると考えていました。逆に、そういう人たちからマナーじゃないですけど、コミュニケーションの仕方を教えてもらえたかなと思っています。僕もそういうところに足を運ぶということは大事かなと思っていて、新入社員ぐらいの時に人付き合いを学べたかなというのはありますね。
あとは金額の大小ではないですが、サッカーは色々な海外のチームとやる機会があります。僕が入社してから4試合か5試合ぐらいを長居でやっていて、その内3試合ほど、担当をさせていただきました。僕はそこで直接相手のチームと交渉することあったので、それは良い経験になりましたね。今、Jリーグ全体でアジア戦略をやっている中で、20数年前には考えられなかったことができていると実感すると同時に、そこにとても感謝しています。
あとは、初めて優勝を味わった去年なんかは働いていて良かったなと感じました。優勝争いをすることも何回かありましたし、ロンドンオリンピック後ぐらいからセレ女ブームができてチームが話題になってくれた。加えてその前から香川真司や乾貴士という後にヨーロッパで活躍する選手がいたので、その頃から事業規模が少しずつ大きくなって来ているのかなとは思っています。僕が入社した時の倍ぐらいにはなりましたね。
オリックス・山本:スポーツビジネスの場合、ベースを積み上げていくことが非常に重要になります。これは営業マンの努力だけでは難しいですが、逆に一旦ベースができてしまうと、簡単に崩れることはないように思います。例えばファンクラブ会員数だと、うちは約55,000人ですが仮に今シーズン最下位になっても次の年に会員数が0になるということはないんですよね。当然チーム成績でファンクラブ会員数や観客動員数だとかスポンサーの数は影響は受けますが、そこまで大きく増えたり、減ったりすることはないと考えています。当球団の場合、外部環境やチームのポテンシャルを考えるとまだまだ伸び代があると思っていますので、ファンクラブの会員数や動員数のベースを少しずつ積み上げていくことが重要だと思います。
-オリックスさんは神戸から大阪に移転しましたが、そこで変わったことはありますか?
オリックス・山本:数年前に京セラドームに本拠地を移し、また昨年、ファームの施設や選手寮も舞洲に移転させました。立派な室内設備も揃いました。しっかり育成をしてやるという体制が今まで以上にできたのかなということですね。
私自身も神戸に住んでいますし、少し前は、神戸のシーズンシートのオーナー様から「神戸から大阪に行っちゃったね、寂しいね」という声は聞きましたけど、今は、あまり聞かなくなりました。
今シーズンも神戸で13試合を開催しています。神戸在住で応援していただいている方もたくさんいますし、また、全国各地にファンクラブの会員もいて応援していただいているので神戸だから、大阪だからという感覚は僕はあまり持っていません。
今シーズンは京都の西京極でも主催試合を開催しました。私の個人的な思いとしては、大阪、神戸ももちろんですが、エヴェッサ、セレッソ、バファローズの3球団で関西を盛り上げていければと思っています。
関西では2020年のオリンピックの後に(注1)マスターズという世界規模な大会があったり(注2)万博開催の可能性があったりします。ジャンルは違いますが、この機会を利用し、インバウンド需要など取り込んだり、東京に負けないようにもっと関西が盛り上がっていくと面白いですよね。こうした機会で関西の人口なんかも増えていくと僕らのビジネスの幅も広がると思いますね。
(注1:ワールドマスターズゲームズは、国際マスターズゲームズ協会(IMGA)が4年ごとに主宰する概ね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰もが参加できる生涯スポーツの国際総合競技大会)
(注2:2025年国際博覧会(万博)の大阪開催を目指している。)
その中で我々3チームで何を協力していくのか?・・・。単純に相互集客を考えたいところですが、これはなかなか難しいんですよ。サッカーを観に行っている人を野球場に、野球好きな人をバスケットボールにというのは、現実的にはターゲットがそれぞれ違うので難しいんです。ただ3チームで、成功体験は共有できるかなと思っています。反応のよかった取り組みの共有ですね。バスケットボールでこういう風にやったら、試合の演出をプロジェクションマッピングをやったら盛り上がったとか、こういったグッズを配ったら成功したとかですね。舞洲プロジェクトができたことによって3チームの距離が縮まりました。これはお互いにとって非常にプラスなのかなと思います。
1つのチームのファンではなく舞洲の3チームのファンに
-3チームでスポーツを横断的にこんなことがやれたら良いなというのがあれば教えてください。
エヴェッサ・清水:舞洲プロジェクトのエイプリルフール企画はBリーグからも評価が良かったですし、このプロジェクトを通じて色々と3チームで連携して行う施策ができたらなというのは思います。
参考:異なるチーム間での大型移籍!?舞洲で行われたエイプリルフール企画の裏側
https://archive-voice.maishima.osaka/post/398/
舞洲は、統合型リゾート(IR)の開業を目指す夢洲地区や、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の中間地点という立地です。僕は舞洲に人を呼ぶということを重要視したいと考えているので、舞洲の地で見るだけじゃなくてプレーする、体験するということができたらいいと考えています。例えば、TV番組でキックターゲットをするという企画をやっているのを見たことがある人も多いと思います。バスケットボールでもそういった遊びがあるので、舞洲プロジェクトの3チーム共同の企画としてやってみたいですね。あとは、ファン感謝デーなどは一緒にやったら面白いかもしれないですね。
セレッソ・猪原: 正直難しい面が多いですね。例えばエヴェッサだとシーズンが重なる部分と重ならない部分があったり、野球のオリックスは年間を通してずっと試合をしていたりとか。アリーナでやるスポーツとそこ以外というのもあります。集客をというところでやるとなっても、果たして同じ客層なのかと言われたら、そこを深掘りしていかないと。さらに、費用対効果の話になると果たしてそれって本当にマッチングするのかなどを分析しないといけなくなります。簡単には「プロジェクトを立ち上げました、相互集客です」というわけにはいかないだろうなと思います。
ただ、今回ような企画で常に一緒にやっているというのを出しながら、大阪にはこういうチームがあるよとPRしていくことはできますしそれはとても必要だと考えています。舞洲でサッカーと言えばセレッソ、バスケはエヴェッサ、野球はオリックスと、認知度を高めることが大事かなと。そのツールとして今回のエイプリルフールのSNSの取り組みがあると思うので、ネタを仕込んで行くというところでやっていければいいなと思います。
オリックス・山本:3チーム横断的に行う取り組みとして、エヴェッサの清水さんが話したようにファン感謝デーのようなライトな取り組みを一緒に行うのは良いと僕も思います。
例えば、野球やバスケットボールの凄さをいきなり試合を見て感じて欲しいというよりは、バスケットの選手はこんなに上手にフリースローを決めるのか。じゃあ、野球選手のT-岡田選手がやったらどのくらい入るのか、というような企画を楽しんでいただくというようなことが面白いのではと考えています。舞洲の体育館などで、3チームのファンにそれぞれのトップアスリートの技を見てもらうというような取り組みです。ファン感謝デーとしてチアも入れてチケットを売るのも良いかなと。コアファンは向けの取り組みではないかと思いますが、ライトなファンが獲得できるかもしれないですからね。
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