IT企業からプロ野球球団まで、多くを巻き込む大阪エヴェッサの集客戦略と将来像とは。

大阪エヴェッサで試合運営担当として働く手塚明子氏。前編では、手塚氏がプロクラブの運営に携わるまでの経緯と、Bリーグへの参入時の苦労についてお話していただいた。今回は手塚氏の現在取り組んでいる舞洲での試合運営業務を中心に、大阪エヴェッサの目指す姿について伺った。

(取材:竹中玲央奈)

ファンを巻き込む取り組み

現在私が担当している主な業務は、ホームゲームのスケジューリングやアリーナの手配から始まり、打ち合わせ、実施に向けての進行、台本、警備など各業者との調整、そして当日の運営といったところです。

バスケが好きな層は、もちろん頻繁に試合を観に来てくださるのですが、私たちはより集客を増やしていくためにも、もっとバスケを好きな層以外に対してアプローチをかけていかないといけないと考えています。

バスケは野球やサッカーに比べて試合展開が早く、やったことのない人でも見ていて面白いと感じることができるスポーツだと思います。試合を1回見ただけでハマってくれる方は非常に多いので、新規のお客さんに対していかに来てもらうかという点に注力して活動しています。そのためには、バスケという競技以外の面で引きを出すために、イベント性を高めていこうと運営と広報で打ち出してきました。

その中で年末には「年末のエヴェッサは想像以上にスゴイ!」という特別企画を打ち出していきました。

時期的にも他のアリーナの稼働が止まっていく時だったので、とにかくインパクトを出して新規の層を集めようという方針で動いたものです。この特別企画は今後も定番にしようと思っています。その他にも、例えば分かりやすい飲食の販売でも、1mあるロングポテトとか、めちゃくちゃ大きなメガ唐揚げとか、とりあえず“スゴイ”ものを売ってみようという感じで。

この企画以外にも、イベントはよく開催しています。対戦相手が琉球ゴールデンキングスの時には沖縄マルシェというような形で、沖縄のアーティストによるミニライブを行ったり、沖縄の名産物を販売したりしました。

またここ数年で有名になってきている「カープ女子」に見られるように、女性のSNSによる拡散力というのはとても高いので、そこに注目してみたりもしました。レディースデーを設定して女性の方に来ていただき、中から情報発信してもらえるようなコンテンツというのを入れ込むといったことをしましたね。

大阪エヴェッサだけでなく、他のチームもイベント性というのは重視しているところだと思います。例えばアルバルク東京も女性をターゲットした、会場内に良い香りを入れる演出効果を取り入れていました。

大阪エヴェッサは関西コレクションと協力しながらイケメンバーカウンターを作って、モデルさんを入れて、そこで写真を撮ってSNSで拡散してもらうとか、本当に多彩でバスケのイベントだとは思えないようなものも多いくらいです。

エンターテイメント性を高めるために

Bリーグが出している方針の中で「エンターテイメント性の追求」というのがあります。これを受けて、それぞれのチームが様々な取り組みをされていたと思うのですが、その中で私たちはチームラボさんとコラボをして、「大阪エヴェッサ×チームラボ4Dステージ」と題し、演出部分に力を入れていこうということになりました。それが「舞洲エヴェッサパーク」というプロジェクトです。チームラボさんとは元々、スポンサーとしてごく協力をいただいていました。クラブ発足の初年度からご協力いただいているということで、私たちとしてもBリーグが始まるタイミングを機に、一緒に新たに何か始めたいなと思っていました。チームラボさんもいろいろなイベントをされていますが、スポーツ系のイベントはまだ手がけたことがなかったらしく、お互いに初めての試みということで、一緒にやってみましょうということになりました。

舞洲の府民共済SUPERアリーナとすぐ横の円形広場が私たちの敷地範囲内になっているのですが、将来的には、朝には広場で複合型のイベントを楽しんでもらい、その後に会場へ入ってバスケ試合を見てもらってというような、丸1日楽しめる場所にしたいなと思っています。

またこのプロジェクトには、舞洲エリアをバスケの聖地にしようという趣旨もあります。サッカーの国立競技場、野球の甲子園球場といったように。現在、学生の大会で大阪のアリーナを使うという機会はまだ少ないです。

これから全国大会規模、あるいはせめて関西の決勝クラスの試合は舞洲で、という流れができればと考えています。